HY@57です。
シルバーウィークの連休を利用して北アルプスの上ノ廊下に行ってきましたので、レポさせていただきます。
9/18(土)
6:50に扇沢でトロバスに乗車し、黒部ダムから10:00の平ノ渡の乗船に間に合うように黒部湖畔の登山道を進む。
道中では一昨日の雨によるキノコの姿が散見され、キノコ講座を交えながら本日の食糧調達にも精を出す。平ノ渡の乗船時間には余裕で間に合い、平ノ小屋で一服。10:00に渡し船に乗って黒部湖対岸へと渡る。
ここから奥黒部ヒュッテまではコースタイム二時間だが、黒部湖がゆるやかに収束し、沢上地形になった時点で、待ち切れず登山道を外れて入渓する。
上ノ廊下はコバルトブルーの水流に白色の花崗岩が映え、早くも大渓谷の魅力全開。入渓直後に様子見も兼ねて渡渉ファーストトライを試みるが、強力な水圧で吹き飛ばされてアウト。諦めて側壁をヘツリ、流れの緩いところを泳いで先に進む。後になって振り返ってみると、この渡渉が上ノ廊下の核心であった。
奥黒部ヒュッテ付近の東沢出合にほぼ予定時間通り到着し、いよいよ本格的な上ノ廊下の遡行開始。下の黒ビンガの手前までは比較的入りやすいこともあり、釣り師パーティーの姿もちらほら。
しかし、下ノ黒ビンガ付近から一気に渡渉のレベルが上がり、スクラム渡渉や水流の流れを読んだ泳ぎなどを多様する沢屋の世界となる。
下の黒ビンガを越えた辺りで大岩魚がうごめく釜を発見し、しばし本日の食糧調達タイム。皆次々と大物を釣り上げ、本日の岩魚パーティーが約束される。
口元ノタル沢出合付近では、某パーティーが先のゴルジュで進退窮まったらしく、ここで幕営して明日撤退するとのこと。しかし、いざ突入すると、流れは強いものの絶望的なポイントはなく、スクラム渡渉やエディの有効活用でなんとか突破する。
ここのゴルジュで結構水に浸かったこともあり、いい加減身体も冷えてきたので、本日は廊下沢手前の河原で幕営決定。薪の確保で立ち枯れの針葉樹を切り倒したら、含有成分のヒノキチオールの影響で、塩焼きにしたはずの岩魚がドクターペッパー味にチェンジ。黒部の大自然の中で、人工的な味を楽しむという贅沢を味わう。
9/19(日)
快晴の中、7:15に幕場出発。朝のすがすがしい空気を吸いながら、イワナが優雅に泳ぐ清流の脇を進む。
天然ダムであった黒五跡では、広大な河原がどこまでも続いている。右手に赤茶けた斜面に流れを落とすスゴ沢の姿を確認すると、いよいよ上の黒ビンガが出現。
上の黒ビンガは、下の黒ビンガ以上のボリューム間を抱えた見事な側壁で、思わず「ビンガ~ビンガ~♪」を熱唱。渡渉でそれほど困難な場所も無く、大自然の創りし壮大な渓谷美を心から満喫する。
10時前にビンガを抜け、薬師岳と北薬師の間のカールに端を発する金作谷出合に到着。上部には北薬師の岩峰群や雪渓の姿を望むことができ、中々のビューポイント。ここは例年遅くまで雪渓が残っているということで、雪の無いこの季節でも、草付きのラインや岩の転がり方から、その事実が確認できる。
金作谷出合から先が、上ノ廊下で一番泳ぐポイント。やや確保が欲しい様な渡渉でも、水流を見極めてガンガン泳ぐ。今回、普段の沢登りではまず考えることの無い、エディとストリームの見極めによるルート取りが功を制したので、泳ぎ系の沢はボートアクティビティの知識を導入する事で、パフォーマンスの向上が見込まれることを実感。
しこたま泳いだ後の休憩では、焚火を起こして冷えた身体を温めての大休止。ここから先は困難な渡渉も無く、上ノ廊下成功を確信する。
立石奇岩では、尺岩魚の比ではない巨大シャチに遭遇。よく見ると、シャチの浮き輪を持ったソロ登山者が歩いて下降してきている。話を聞くに、どうやら上ノ廊下シャチ下降にトライ中とのことだが、乗った矢先すぐに転覆するので邪魔以外の何物でもないとのこと。世の中には、まだまだ自分の杓子定規では測りきれない、とんでもない変態(褒め言葉)がいるもんだ…。
この先、沢は一度平凡な河原状になり、E沢出合から始まるゴルジュから、食糧調達の為に竿を出してゆっくり釣り上がる。しかし、この辺は登山道が平行していて登山者の入りも多い為か、スレまくっていて全く釣れない。辛うじて二匹釣り上げるものの、昨日十分にイワナを堪能したこともあって即リリース。
薬師沢小屋手前の河原に幕場を張って、豆腐作りや焼きマシュマロを楽しみながら上ノ廊下最後の夜を過ごす。
9/20(月)
寒冷前線の通過の為、0時頃からポツポツと雨が降り始める。しかし朝には小雨になっていたので、様子を見て8:00に出発。
出発から30分ほどで薬師沢小屋に到着し、上ノ廊下遡行成功を祝って写真を撮った後、再び源流の方へと歩を進める。小屋からは40分程で赤木沢出合に到着。ここで黒部源流組と別れ、美渓で有名な赤木沢の遡行を開始する。
赤木沢は思った以上に滝の連続で、登攀要素が皆無だった上ノ廊下の後だと新鮮。グラビアルートの為、巻き道も非常にしっかりしているが、我々は極力巻かずに滝中突破でガシガシ登る。
赤木沢の核心となる35m大滝上の二俣で、双六の方へ進むメンバーと別れ、単独遡行開始。小滝を登り続けるとやがて沢は源流の様相を呈し、湿原を一跨ぎすると薬師沢左俣に入る。
後はこの沢をひたすら詰めると、北ノ俣岳手前の登山道に到達。ガスで視界は全く無いが、気持ちの良い達成感に包まれる。
北ノ俣岳山頂直下では、雷鳥様七匹御一行に癒される。山頂に到達すると僅かに遠くの視界も開け、色付き始めた山肌からは旅の終わりを感じさせる秋の気配を感じる。
ここからの下山路は快調に飛ばして折立まで二時間弱。登山口に到着した時点で、出発間際だったジャンボタクシーに相乗りして富山まで直行し、充実した連休の沢旅は幕を閉じた。