メンバー(OBOG):土屋さん(22代) 大家さん(35代) 渡辺仁さん(35代) 神谷さん(36代) 越智直実さん(36代) 石川さん(38代) 杉林さん(38代)吉村さん(64代) 田中さん(73代)
現役:藤田、福地、浦林、中村、高田
令和5年の山荘祭に参加してきました。
OBOGと現役の参加者14名で、予想外に楽しい時間を過ごさせていただきました。
ありがとうございました。
さて、以下の2点について、個人的な感想をまとめておきます。
・「レルヘンヒュッテ」のこと
・今回の山小屋前道路側の森林整備について
10月14日の早朝、杉野沢から早大の山小屋に向けて車を走らせていると、
廃墟かと思うような傷んだ民宿やロッジが目立ち、
今まで感じたことのなかった「寂れた」印象を受けました。
2019年の10月に、70周年イベントで笹ヶ峰に上がった時に、
この道を自転車でゆっくり往復しましたが、そんな印象はなかったので、
大げさに言えば2020年からのパンデミックの影響がこうして「寂れて」見えている、
ということかと思います。
中でも、早大の小屋と同時期に新築した
「レルヘンヒュッテ(武庫川女子大)」の崩壊ぶりに私は愕然とし、
素通りすることができずに少し戻って車を止め、
豪雪の中で廃墟となってしまったと思われる小屋の姿を観察し写真に収めました。
武庫川学院のHPで確認すると、2019年にスキー山岳部が休部となり、
2020年6月に「小屋は廃止」とあります。
1983年竣工なので早稲田の山小屋竣工の1年前で、今年が40年の節目でした。
歴史的に見れば、2020年からのパンデミックがトリガーとなり潰れた、
と言えると思います。
日本のスキーリゾートは、日本人スキー客の減少により、
インバウンド向けの展開をする中でパンデミックとなり、
さらには地球温暖化という気候的リスクのダメージもジワジワと伴いつつ、
「40年前とは全く違う時代の中にある」と言えそうです。
さてそこで、同時代を生きてきた我々の山小屋です。
現役、新人も数多く、少なくとも妙高に山小屋を持つ大学の山関係組織としては
順調に歴史を重ねている、という見方ができるかと思います。
小屋入り口に「早大ヒュッテ」なるバス停も立ち、驚きでした。
ちなみに、笹ヶ峰直行の頸南バスには「京大ヒュッテ」というバス停があり、
ある意味では「対(つい)」としての「早大ヒュッテ」ですが、
我々関係者はこの呼称を使っていませんね。
京大・早大のヒュッテの存在は、
ある意味では妙高高原ブランディングの重要な要素なのかも、です。
観光地であっても市街地であっても、
「廃墟」は土地の質感と印象を大きく低下させます。
それと反対に、きれいに整備した環境の中で、
古くても丁寧な使い方が印象として見えてくる建物は、
ただそれだけで、なんだかうれしい気分になります。
今回の環境整備の目標だった、「道路から小屋が見えるようにする」ということは、
実際にそうしてみると、最初は「やり過ぎ」と思いつつも、
結果的には正解だったかなと、私は思いました。
「雪かきは生きてる証」という言葉が、雪国にはありますが、
草刈りも生きてる証であり、
何もしないでいるとうっそうとした「緑」に覆われてしまう森の中では、
道路から「小屋が見える」ように整備した今回の作業は、
未来を見据えた整備だったと思います。
そこからもう一つ、気になっていることを書きます。
伐採した樹木は、本来であれば「薪」として
熱エネルギーに変えることが理想なんですが、
さすがに労力がかかりすぎて、
短時間の整備では、その理想を現実的な目標として設定するのは困難です。
移動のエネルギーと人件費で考えると、「買った方が安い」という見方もありますが、
いわゆる「サスティナブル」な時代の選択で言えば、
目の前の樹木を熱エネルギーに変えることができる、
というのは「恵まれた話」に思えます。
ちなみに、今回伐採したなかで直径30センチ超樹高20m超は
6本くらいだったと思いますが、
年輪を数えると、だいたい40年程度でした。
早稲田の小屋がある場所は、
「妙高戸隠連山国立公園第2種特別地域」の中の民有林(杉野沢財産区)です。
この場所は、基本的にはスギ・カラマツを植林して財産として育てている林地
ということになりますので、それ以外の雑木は切っても大丈夫ということです。
現実には、植林したスギ・カラマツが雑木に被圧されて、
現状ではほとんど「雑木林」です。
国立公園第2種特別地域の伐採要件もクリアしています。念のため。
私の手元にある、35年くらい前の山小屋前の風景が入る写真でも、
スカスカの土地に若いスギが数本立っているという印象です。
道路向かいの土地には、大きなウダイカンバが伸びていて、
それが小屋の玄関から見えていた、というのが当時の印象です。
今は、小屋正面で一番手前のホオノキが、一際高く伸び、
さらにミズナラと思われる高木が点在しています。
そういえば今回の整備作業中、灌木の中で「ユキツバキ」の多さに私は目を留めました。
しかし、山小屋の前でユキツバキの花を、ちゃんと見た記憶がありません。
こんなにたくさんあったのか、という発見でした。
細かく観察すれば、いろいろと発見もあるかもしれませんが、とりあえず、
「人が普通に歩いて入れる環境」に整備することから開ける
新たな「発見」かもしれません。
道路と小屋の間の林地。手のつけられないヤブ状態から、
場合によっては幕営もバーベキューもできそうな空間に広げることは、
「国立公園」内という印象から、今まで思ったこともないことでした。
しかし、今回の大胆な整備で明るくなったヤブの先に、一筋の道が見えてきた、
今回の山荘祭参加でした。